米国と中国は現在、お互いに追加関税、制裁関税をかけあう経済戦争まっただ中にある。はたしてこの争いの行方はどうなるのか。米中貿易摩擦問題について、経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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米中間の貿易摩擦が日に日に熾烈さを増している。
まずアメリカが中国産を含む鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税をかけ、対する中国もアメリカ産の豚肉や果物など128品目に最大25%の関税を上乗せした。続いてアメリカは知的財産権侵害を理由に約500億ドル相当の中国製品1102品目に25%の制裁関税を課すと発表し、そのうち自動車や産業機械など818品目について7月6日に発動。
中国も報復措置として約500億ドル相当のアメリカ製品659品目に25%の関税を上乗せすることを決め、そのうち自動車や大豆など545品目についてアメリカと同日に発動した。さらにアメリカは10%の追加関税を課す2000億ドル規模の中国製品6031品目のリストを公表し、中国企業の対米投資制限も検討。中国は「断固として反撃する」と表明した。
まさに「目には目を、歯には歯を」で報復関税の応酬が続き、「貿易戦争」に発展しつつあるのだ。
その背景には、アメリカの膨大な対中貿易赤字がある。米商務省が発表した2017年の貿易統計によると、モノの貿易赤字は7962億ドル(約86兆8000億円)で、その半分近い3752億ドル(約40兆9000億円)を中国が占めて過去最大になった。これに大きな不満を抱くトランプ大統領が中国に圧力をかけているわけで、アメリカ側はかつての日米貿易摩擦で“完勝”した歴史を米中貿易摩擦でも再現できると考えているのだろう。