年金の「もらい方」で重要なのは、「いつから」もらうかだ。年金の受給開始年齢は65才が基本だが、それ以前に受け取る「繰り上げ受給」と、それ以降に受け取る「繰り下げ受給」も選択できる。
多くの識者が「可能ならばトライすべき」という繰り下げ受給は、受給年齢を1か月繰り下げるごとに受給額が0.7%ずつ増額される。たとえば65才から月額20万円の年金をもらえる人が70才からの繰り下げ受給をすれば、約4割増の月額28万4000円をもらえることになる。
繰り下げ受給は長生きするほどメリットが大きくなる。受給開始から12年経つと、通常の65才受給開始より得になり、その後は受給総額がどんどん増えていく。つまり、70才で受給する場合は82才まで生きると、65才受給より年金総額が多くなるというわけだ。
もちろん、どれだけ長生きできるかは誰にもわからない。「繰り下げても、年金をもらい始める前に死んでしまった場合はどうなるの?」という疑問もあるはずだ。ありがたいことに、繰り下げにはいくつかの「セーフティーネット」が用意されている。『届け出だけでもらえるお金』の著者の井戸美枝さんが語る。
「繰り下げ受給をしている最中に死亡した場合、65才から亡くなるまでの期間に本来受け取るはずだった金額が未支給年金として遺族に支払われます。また繰り下げで年金をもらっていない時期に病気になるなどでお金が必要になったら、申請すればそれまでストップしていた分の年金を一括で受け取れます。繰り下げ受給のデメリットはないので、とりあえず請求しないでおいて、何かあれば申請して、一括で受け取るのが賢いやり方です」