菩提寺が遠方の郷里にある場合、ついつい足が遠のいてしまう墓参り。自宅近くに墓があれば……と改葬を望む人が急増しているが、いざ田舎の墓じまいを決断しても、当事者に数多の難題が降りかかることは知られていない。
寺が墓石撤去を妨害
このお盆休み、実家の長野県松本市まで墓参りに行った都内在住のA氏(65)は、疲れ果てた表情でこう話す。
「妻も60代で、体力的に遠方の墓参りは厳しい。今年を最後に両親の墓を処分して、都内の共同墓地にでも移そうと思っていたのですが、住職に相談したところ、ご立腹でして……。『檀家でなくなるのなら“離檀料”を80万円払ってください』と言われて、途方に暮れています」
墓を畳む「墓じまい」が急増している。厚生労働省によると、2016年度の墓じまいは約9万7000件。5年前から2万件増え、統計開始の1996年以来過去最高を記録した。だが、そんなブームの中で、A氏のようにトラブルに巻き込まれる事例が続出しているという。
墓じまいとは、以下の手順で行なわれる“お墓の引っ越し”である。
【1】新たな安置先から「受入証明書」をもらう。
【2】菩提寺から「埋葬証明書」をもらう。
【3】菩提寺のある自治体に【1】と【2】を提出して改葬許可証をもらう。
【4】菩提寺で「御霊抜き」の供養後、墓を撤去し、遺骨を新たな安置先に納骨する。
この過程で一番揉めやすいのは、【2】の際に菩提寺に支払う離檀料(檀家を離れる時にこれまでの謝礼として支払うお金)だ。