お嬢様学校、お嬢様大学を出て外資系金融勤務の夫と結婚したライターの高木希美氏。そんな高木氏によると、お嬢様学校では推薦枠をめぐって激しいバトルが起きることがあるという。その主役は、当事者の生徒ではなく母親──高木氏がリポートする。
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お嬢様校と言われる学校には、数は少ないですが、大学の指定校推薦枠があります。港区のあるお嬢様高校では早稲田大学、慶應大学、上智大学、東京理科大学、学習院大学、武蔵野音楽大学などへ行ける枠が。また別のお嬢様高校では、やはり早稲田大学、慶應大学、青山学院大学、学習院大学、明治大学などの指定校推薦枠があります。
その推薦枠獲得のために必死になるのは、他ならぬ親、それも母親たち。私の同級生のエリカは三姉妹の末っ子で、お母さんが大の「慶應好き」で有名でした。お父さんも慶應でした。お姉さん2人は推薦枠をゲットできたものの、慶應ではなかったので、お母さんはエリカが何としても慶應の推薦枠を取れるよう、学校での生活態度から中間・期末試験対策までつきっきりで必死にやっていました。かなり優等生だったのですが、エリカは残念ながら慶應の推薦から外れてしまったのです。
「エリカちゃん、慶應の推薦ダメだったって……」
「まさかだよね、あんな優等生してたのに」
「お母さんがやばそう」
クラスでもそんな噂が聞こえてきました。実際、お母さんは泣き叫び、ビンタして彼女を責め立てました。
「学校以外は2週間の外出禁止令出されて、どこにも寄り道できないの。このあと、スマホも取り上げられる。だから返事もできなくなるけど、ごめんね」
そんなメールが何人かに来たのを覚えています。
お嬢様学校では、勉強の成績では生徒同士というよりも、母親たちのほうが熱心になりライバル意識を持ちます。「○○ちゃんには絶対負けないで」「次のテストは30位以内に入りなさい」なんて言うらしいのです。
暴走した母親たちが、ライバルを蹴落とそうと足の引っ張り合いをすることもしょっちゅうでした。娘のスマホからLINEグループのやりとりをのぞき見たり、母親同士のネットワークで、ライバルの同級生の素行を調べて、ちょっとでもマイナスになりそうなことがあれば学校に“通報”するのです。