ただ、さば缶はこれまで、地方の郷土料理に多く使われてきたという。
「例えば、京都の丹後地方のごちそうといえば、さばの味付け(しょうゆ煮)缶をそぼろ状に炒って敷き詰めた『バラ寿司』がありますし、長野北部や新潟上越地方にも、さばの水煮缶とネマガリタケ(山菜)を使った『サバタケ汁』があります。毎年ネマガリタケの季節になると、スーパーには大量のさば缶が並ぶのが風物詩になっているんですよ。その他、沖縄県石垣島の『からそば』や山形の『ひっぱりうどん』など、全国各地の郷土食にさば缶が浸透しているんです」(黒川さん)
それでもさば缶は、業務用などで需要が高いツナ缶を上回ることはなかったが、2013年7月に転機が訪れる。
テレビ番組『たけしの健康エンターテインメント! みんなの家庭の医学』(テレビ朝日系)で、さばの美容・ダイエット効果が紹介されたのだ。日本の食文化に詳しい、全日本さば連合会の池田陽子さんが語る。
「この放送をきっかけに、さばブームが起きました。さば缶に含まれる脂肪酸・DHAやEPAが作用し、健康にいいだけでなくダイエット効果もあると、当時女性を中心に話題になったんです。さば缶が飛ぶように売れ、多くのスーパーで品薄になりました。また、同時期に青森県や千葉県、福井県、鳥取県など各地でさばによる町興しも始まりました。さば専門料理店が増えたり、『サバサンド』など洋風さばグルメも注目され、さばがメディアに頻繁に取り上げられるようになったことも、さば缶ブームに拍車をかけました」
2017年10月に放送された『名医とつながる! たけしの家庭の医学』(テレビ朝日系)で、血管の老化予防としてさば缶を使ったレシピが紹介されると、ブームはさらに勢いを増した。またこれに加え、「この数年、ツナ缶の原料となるまぐろとかつおの値上げが続いた一方で、さばの価格が安定し、品揃えも豊富だったことが要因として大きい」(黒川さん)という。
※女性セブン2018年9月13日号