血液をサラサラにするなどの健康効果だけでなく、美肌・ダイエット効果も期待できるとされ、一大ブームを巻き起こしている「さば缶」。公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会によると、水産缶詰の生産量は、さば缶がツナ缶を抜いてトップに。大手メーカーも1年間のさば缶の予定生産量を既に売り切り、追加生産で何とか対応している状況なのだという。
さば缶は、2013年頃、テレビ番組でその健康効果や美容効果が取り上げられたことでブームに火が着いたと言われるが、そうした理由に加え、2011年の東日本大震災も「大出世」の契機となっている。
『蘇るサバ缶~震災と希望と人情商店街~』(廣済堂出版)の著者・須田泰成さんは、2007年から東京・経堂の商店街で、さば缶による町興しをスタートさせた。2009年には、商店街でさば缶料理を提供するお店が十数店舗に増え、地方から足を運ぶ人もいるほどの「さば缶の街」となった。
そんななか出会った、宮城県石巻市にある水産加工品メーカー「木の屋」のさば缶が、思わぬ展開を巻き起こしていく。須田さんが語る。
「木の屋さんのさば缶は、水煮は塩。みそ煮はみそと粗糖で味付けたシンプルなもの。脂乗り抜群の獲れたてのさばを、添加物を使わず缶詰にしているから、臭みもなくおいしいと評判になりました。商店街では、木の屋さんのさば缶を扱うお店も増えました。
木の屋さんと、街ぐるみで家族のようなつきあいをしていた矢先、東日本大震災が起きたんです。幸い、顔見知りの社員の皆さんは無事でしたが、工場は流され壊滅的な状況になってしまった」