常に大規模な自然災害と隣り合わせの日本では、災害が起きることを前提に暮らしていかなくてはならない。被災からの再起を図る上でとりわけ重要となるのが「お金」だが、“手助け”となる制度もあることが十分に意識されているだろうか。
取るものも取りあえずたどり着いた避難所でも、一息ついたその直後から頭をもたげる心配事は、当座のお金だ。
量の多少はあれ、避難所には支援物資が届く。だが、食料や日用品は最小限で、必要とあらば自ら買いに走らなければならないし、メガネを修理するにも病院に足を運ぶにも、当然ながら「現金」が要る。
持ち出した財布を開けてみると現金がなく、かといって、近隣のATMなどは被害を受けて故障していて引き出せない、といったことが予想される。
そんな時、例えば2016年の熊本地震の際には、避難所近くに車両型郵便局が登場。車内にはゆうちょ銀行のATMが設置され、被災者の現金需要に対応した。
「ただ、ATMを利用するにはキャッシュカードが必要。財布と別に保管していたら、被害で行方がわからなくなっていることもあるでしょう。同様に、通帳や印鑑がないということもあり得る。
そんなとき、ゆうちょ銀行では写真付きの身分証明書などによる本人確認ができれば20万円まで引き出せる“非常取り扱い”があり、他の銀行や信金でも過去の自然災害の際には10万円程度を限度に対応しました」(危機管理教育研究所代表の国崎信江氏)