11月にシンガポールで開催されるASEAN首脳会議、その後、パプアニューギニアで開催されるAPECサミット会議に、アメリカのトランプ大統領は出席しないことになった。
ホワイトハウスは8月31日、両会議について、ペンス副大統領が出席すると発表した。中国メディアの環球時報は9月3日、この件に関して、「アメリカのメディアでは、“中国は魅力をアピールするチャンスを得た”と報じている」などと伝えている。日本ではあまり報じられていないが、その意図はどういうものなのか。同記事の要旨について、簡単に紹介したい。
トランプ大統領は大統領就任直後にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)から離脱、日米韓軍事同盟のコストについて疑問を投げかけたが、その後、アメリカの官僚たちは、インド太平洋戦略を前面に押し出して、これがアジア地区における戦略のコンセンサスであると公言していた。しかし、アジアでの重要な会議に出席しないのでは、インド太平洋戦略を成功させるどころか、アジア太平洋地区におけるこれまでのプレゼンスの維持すら基本的に放棄しているに等しいのではなかろうか? そうした懸念を強く感じる。
北朝鮮の核兵器放棄を承服させなければならない。戦略的な競争相手である中国との貿易摩擦も抱えている。アメリカの外交政策においてもっとも厳しい試練に置かれているのはアジアである。そのアジアの重要会議に出席しないというのは間違っている。
もっとも、トランプ大統領側にも出席できない理由がある。アメリカ議会中間選挙は迫っているし、ロシアゲートなど一連の調査もある。国内問題に注力しなければならないといった事情もある。