トランプ大統領は11月、アジアの重要会議には出席しないが、パリで行われる第一次世界大戦終戦100周年記念活動には出席すると発表している。はっきりと、アジア軽視、欧州重視の傾向が見て取れる。
アメリカのメディアは、アメリカの大統領が出席しない中で、中国は両会議において自国の理念を更に大きく提唱するだろうと危惧している──。
トランプ大統領は中国との貿易協議において、厳しい対応を続けている。表面上は中国のハイテク製造業に関する発展計画である「中国製造2025」の阻止であるとか、知的所有権を守らせることを理由として挙げているが、もし、本当に中国の台頭や中国式のビジネススタイルの蔓延を阻止したいのならば、TPP、あるいはインド太平洋戦略により中国包囲網を形成するとか、アジアにおけるアメリカのプレゼンスを高め、中国のプレゼンスを抑えることなどが有効な戦略となるはずだ。
官僚がサポートしている以上、そんな簡単な理屈をトランプ大統領がわからないはずはない。だとすれば、トランプ大統領の本心は中国とは最終的には敵対するのではなく、協力関係を築きたいと考えているのか、それとも、単純に自分の支持者に対する利益供与にしか興味が無いのか? いずれにしても、トランプ大統領のアジア軽視は中国の覇権拡大に有利に働く可能性は十分あるだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。有料メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も展開中。