富裕層の投資動向を調査分析するウェルスインサイト社によると、2020年までにシンガポールはスイスを抜いて、世界最大のオフショア金融センター(外国人に対して税金を優遇している国・地域)になると予測されている。そんな世界中から富裕層が集まるシンガポールでは、「全身ブランドモノ」で固めた人が急増しているという。『シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)の著者で、当地に住むファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏がリポートする。
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日本では「ブランド品=贅沢品」で庶民が無理して持つのは無駄遣いと言われることもあります。しかし、シンガポールではこれの真逆です。ブランド品は自分のステージを暗に示すシンボルであって、やや無理してでも身につけるべきと思われているのです。そのため富裕層だけではなく、子供たちのスクールバスの乗り降りをサポートするパートタイマーなど、時給がそれほど高くない仕事の人でも、デザイナーズブランドのバッグを身につけています。町を歩けば、全身GUCCI、ルイ・ヴィトン、シャネルという人も増えています。
ブランドモノを持っていないとサークル・人脈の輪に入れないことも多々あります。うわべで判断する人が多いので見た目や身につけている物が近い人と仲良くなる傾向があるからです。
中華系は特に、自分たちの輪の中と輪の外とで扱いをガラリと変える特徴があります。そのため、サークルに入るとビジネスに有益な話や子供の学校の情報などを得られるのです。
つまり、ブランドモノはそのサークルに入るための“必要経費”であって、無駄遣いではないという認識なのです。わざとロゴが目立つブランド品が人気なのもそのためです。近年、デザイナーズブランドのロゴがどんどん大きく目立つようになる傾向があるのも、大きなマーケットである中華系の嗜好からだと考えられます。
また、富裕層との会話では、自分がそのブランドモノを一度でも持ったことがなければ話題に加われないことがあります。例えば、「あのブランドのバッグはどのサイズが持ちやすいか」「入手困難だけど日本の方が入手しやすいのか」と言った質問をされることがあるからです。そのため、一番安い小さな物でも使っておいたほうがよいというケースがあるのです。