実質自己負担2000円で全国各地の自治体から豪華な返礼品を受け取れる「ふるさと納税」は、返礼品競争に拍車がかかり、ブームが過熱。ついに総務省から「待った」がかかり、大きな曲がり角を迎えている。しかし、そんな状況下でもまだ、賢く利用できる術はないのか。日本全国の自治体の対応を取材し、探った─―。
地方創生の一環として整備されてきた「ふるさと納税」だが、規制強化の動きが加速している。全国各地の自治体からは怒りや戸惑いの声が噴出している。
昨年度、町税の税収25億円を大きく上回る72億円の寄付金を集めた佐賀県みやき町の末安伸之・町長の訴えは切実だ。
「ふるさと納税を通じた寄付によって給食費や医療費の無料化、新たな保育所の整備などを進めていたので、寄付が減れば町の財政を直撃します。せっかく地方が独自の取り組みで自立しようとしてきたのに、国はわかっていない」
野田聖子・総務相は9月11日の記者会見で、一部自治体が高額な返礼品で多額の寄付を集めていることについて「制度そのものが否定される不幸な結果を招く」として、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限定。違反した自治体は制度から除外し、寄付しても税の優遇措置が受けられなくなるよう、来年の通常国会に地方税法改正案を提出して規制強化を目指す方針を打ち出した。
2007年に創設されたふるさと納税は故郷や応援したい自治体に寄付すると返礼品がもらえるうえ、所得税・住民税の還付・控除が受けられて、実質的な自己負担は2000円で済むことから、ブームと化してきた(還付・控除の上限額は所得などによって異なる)。一方で寄付金集めに走る一部の自治体は地場産品とは思えない高額返礼品を掲げて競うようになり、総務省は「3割ルール」「地場産品ルール」を守るよう2017年4月に通知。それに従わない自治体が多かったことから、総務省は今回の大臣会見と同時に調査結果を公表した。