コンビニで、ドラッグストアで、ネットショップで──いつでもどこでも食品を買える時代にあって、「あなたから買いたいの。あなたのファンなの!」と多くの客を集めている試食販売員がいる。「試食販売の女王」と呼ばれる土屋美香さん(34才)だ。埼玉県の『イオン浦和美園店』で試食販売員として働いている彼女がスーパーに立つ日は、店舗がメーカーに、通常の5倍の商品を発注するのが常だという。
現在、スーパーで活躍する試食販売員のほとんどは、専門の会社から派遣されたスタッフだ。土屋さんも、『イオンデモンストレーションサービスインク』という会社に所属している。
勤務体系はシフト制。1回の勤務につき5~7時間立ちっぱなしで忙しく動き回る。
「食品を置いて調理するための台をよく拭くこと、手をきれいに洗って消毒すること、仕込みをすることなど“下準備”に意外と時間がかかる。特にお客さまの口に入るものなので、衛生管理は徹底しています」(土屋さん)
地域にもよるが、基本的にスタート時は時給一律。例えば東京・品川であれば時給1100円で募集がかけられる。その後は、各人の能力に応じて研修や店全体の統括を行うリーダー格の『リードSA(セールスアドバイザー)』に昇進。時給が100円上がる。
土屋さんの肩書はもちろん、“リードSA”。完売させた場合、金一封はあるのだろうか?
「あるといいですねぇ!」
答えた土屋さんの表情は、客に向けるのと同じ、とびっきりの笑顔だった。