健康保険組合は全国に1394あり、加入者は約2900万人にのぼる。だが、ここにきて解散が相次いでいる。背景にあるのは財政難だ。2017年度決算で赤字となった健保組合の割合は40%超に達する見通しだ。健保組合が解散すると、加入者は国からの補助金が拠出されている「全国健康保険協会(協会けんぽ)」に移る。
健康保険組合連合会が昨夏に発表した試算は衝撃的だ。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、全体の4分の1超にあたる健保組合が解散危機を迎えるというのである。
協会けんぽに移ることで、様々な“不利益変更”が生じる。社会保険労務士の蒲島竜也氏が解説する。
「健康保険には、加入者やその家族が出産した時に受けられる『出産育児一時金』や、会社員が病気やケガで仕事を休んだ時の『傷病手当金』などの保障、給付をすることが法律で定められています。
多くの健保組合では、そこに独自の保障を上乗せする『付加給付』を設けています。たとえば、本来は5万円前後かかる人間ドックを5000円程度の自己負担で受診できたり、医療費の自己負担上限を月2万~3万円程度に定めていたりする健保組合は少なくない。出産育児一時金の法定額は42万円ですが、5万~10万円程度上乗せしているところも多い。
健保組合が解散して協会けんぽに移行する場合、保険料率は下がることがほとんどですが、付加給付という“特典”は受けられなくなってしまうのです」