その後、様々な店に行ったので香港の外食の基準は大体分かりましたが、多分このコースは1人前2000香港ドルはするでしょう。約2万8000円で、さらに酒代も加わる。正直結婚式以外でコース料理を食べることなどない人生を送ってきただけに、これには至極感激しつつも劉さんに悪いな、と思いつつさらには21年も会っていなかったのにここまで歓待をしてくれるとは友人っていいもんだな、と思った次第です。
食事の後は中秋のお祝い直前の香港の街を少し散歩するとともに「香港島を一番よく見ることができるのはトラムだよ」と、2階建てのトラムに案内してくれました。始発で乗り、あまりにも活気のある香港の街をゆっくりと走ります。ネオンはギラギラと輝き、ガラス張りの高級店には煌々と灯りがついて景気の良さを実感させます。窓は全開になっており、夜風が実に気持ちいい。
終点に着いたところで劉さんは地下鉄の駅まで案内してくれました。そして我々と反対方向の列車に乗ると言いましたが、ホームまでついてきてくれ、最後は握手と抱擁で別れました。一応私も日本から洋菓子と獺祭を持って行ったのでそれを渡し、東京での再会を誓い合ったのです。
私以外の3人は劉さんとは初対面でしたが、帰りの電車の中、「本当に劉さんっていい人だったねぇ……」と言ったきり皆言葉が出ないほど彼のホスピタリティには感銘を受けたのでした。
今回の劉さんのおもてなしは一言でいえば「スマート」なんですよね。まったく押しつけがましさがなく、とにかく自分をわざわざ遠くから訪ねてきた人を喜ばせたいと考え、あとは自分がいかに今日を楽しみにしていたか、そして今楽しんでいるか、昔からの友人と再会できたことが嬉しい、新しい友人ができたことも嬉しい、あなたは美人だね、と言い続けるのです。
もちろん、劉さんの人柄も多分にあるとは思うのですが、こうした「気持ちをドカーンと出す」というのが中国流のおもてなしなのかな、と思いました。日本人はとかく遠慮をしたりへりくだったりするものですが、これから私も嬉しい時はその感情をドカーンと出そう、と香港で決意したのでした。