福岡県のある町では水道料金が月額4370円(2015年)から2万2239円(2040年)になる──というショッキングなデータが公表されている。これは「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(改訂版)」という資料の一部だ(EY新日本有限責任監査法人 水の安全保障戦略機構事務局による)。
この数値は約20年後の予測値なので、一見、「まだまだ先のこと」と思うかもしれないが、それほど軽視しない方がいい。というのも、日本の水道インフラを巡る状況はかなり深刻な状況にあり、対応によっては早晩破綻することを政府が重々認識しているからだ。
実際、水道料金は年々上がり続けていて、日本水道協会によると、料金値上げに踏み切った自治体はこの1年で47にのぼる。家庭用の水道料金は10年前に比べると約160円値上げされ、月額約3228円となっている(20立方メートルあたりの全国平均)。
また、自治体ごとの料金格差も大きく、兵庫県赤穂市が月額853円なのに対し、北海道夕張市は月額6841円。実に月額約6000円、年額にして7万2000円近くの金額差が生じている(日本水道協会 全国の1339の水道事業まとめ 2017年4月1日時点 家事用20立方メートルあたり)。
料金値上げと地域格差はなぜ生じるのか? その答えは2つ。「設備の老朽化」と「人口減少」にある。アクアスフィア・水教育研究所代表で水ジャーナリストの橋本淳司さんが言う。
「水道管は人間の血管と同じで、長く使えば当然劣化します。水道水に含まれる種々の物質が管内を流れていくうちに、内側が錆びていく。厚生労働省は管の耐用年数を40年としていますが、全国に張り巡らされた水道管の多くは高度成長期に設置されたもので、既にそのうちの14.8%が耐用年数を超えています。ところが、これらの老朽化した管の修理・更新率はわずか0.75%で、このペースだとすべてを更新するには、130年かかります。
法定年数を超過したらすぐに管を交換しなければならないわけではなく、50~60年使っている自治体もありますが、老朽化を放置し続けると、地震などの災害時に水道管は破裂しやすくなります」