借金が必要になった時、まず頼るのは家族という人も多いのではないか。仮に50歳ぐらいの男性がお金が必要になった場合、妻が働いていれば頼ることもできるだろうが、専業主婦だった場合はそれも難しい。子供が社会人になっているにしても、まだそんなに預貯金があるわけではないため頼むことはできない。
そこで出てくるのが「親戚」であるが、結果的に誰も幸せにならないケースがほとんどだ。現在は70代の男性・A氏は50代の頃に親戚に借金をしまくった結果、一族の中で実に評判が悪くなり、最終的に一族は互いに疑心暗鬼を抱き、罵り合うようになったという。ここではA氏の借金がきっかけで崩壊寸前に至ってしまった一族の話を紹介する。
A氏はフリーランスのコンサルタントで、40代中盤までは著書もあれば講演なども行ういわば「売れっ子」だったが、40代後半以降仕事が激減し、収入も最盛期の10分の1ほどになった。かつては「先生!先生!」と言われ、銀座のクラブで接待を受けたり、地方都市の講演では1回50万円もの講演料を貰うなど羽振りが良かった。
A氏は売れっ子たる者、カネはジャンジャン使わなければならない、という考え方をしていた。仕事相手や自分を慕って寄ってくるサラリーマンなどと飲む際は高級店へ行き、カードでドーンと払うことを至上の喜びとしていた。10人で会計30万円なんてこともあるが、おごってもらった人たちがペコペコと感謝している様を見るのが快感だったのだ。
そうしたカネの使い方をしていたA氏はバブル時代、東京の土地が軒並値上がりしていた頃に一軒家を購入。この家は現在の評価額は2500万円ほどでしかないが、当時は8000万円もした。しかも、自宅で仕事はできるにもかかわらず、1LDKのマンションを2000万円ほどで購入し、タクシーで毎日そこまで通っていた。一族の間では最も高い家を購入したとA氏は正月やお盆に実家で皆が集まった時に自慢をし、いかに自分の稼ぎが良いかを誇った。
A氏は4人のきょうだいの次男だった。男が3人、女(妹)が1人だ。いずれも既婚者だ。同様に自営業を営む長男からすれば、自分よりも弟の方が稼ぎが良いものだから腹立たしいもの。弟は堅実なサラリーマンで専業主婦である妹の夫も同様にサラリーマンのため、A氏の派手過ぎる人生は羨ましくもありつつ、遠い世界の話だといつも思っていた。