大手不動産ポータルサイトのSUUMOが毎年発表している「住みたい街ランキング」。2018年の関東版では、ここ数年トップを独占していた吉祥寺(東京)と恵比寿(東京)を追い抜き、横浜(神奈川)が初の1位に輝いた。SUUMOで編集長を務める池本洋一氏は、今回のランキングについて以下のように分析する。
「神奈川県の横浜が1位になっただけでなく、埼玉県の浦和と大宮も10位以内にランクインしており、また柏(千葉)、船橋(千葉)、海老名(神奈川)、立川(東京)といった街も過去最高位を記録しています。日本全国で見れば東京一極集中に変わりはないのですが、首都圏という単位で捉えると、各地域の中核都市の人気が年々高まる“中核集中”と呼ぶべき現象が起きていると考えられます」(池本氏、以下同)
郊外の中核都市の人気が高まっている背景として、人々が街に求める要素が大きく変化したことが挙げられる。「緑豊かな閑静な住宅街」というフレーズに象徴されるように、かつては住宅街とそれ以外の地域は明確に区別されていた。しかし現在はその意識が希薄になり、利便性の高い「オールインワン・シティ」がひとつのトレンドになっている。
「学ぶ、遊ぶ、食べる、買う、といった一通りの要素が駅前に揃っていること。これが中核都市の人気の要因です。逆に、ここのところランキングを下げているのが田園調布や国立、新百合ヶ丘といった従来の高級住宅地。総じて、静かな街から賑やかな街へと人気が移っているのが現状だと言えるでしょう」
また、「背伸びをしない」という価値観が若い世代に浸透しているのも注目に値するポイントだ。「穴場だと思う街」の1位に北千住(総合23位・東京)、2位に赤羽(総合19位・東京)がランクインしていることが、その傾向を端的に表している。池本氏によれば、5年前は「北千住や赤羽が住みたい街の総合ランキングで注目されるなんて、考えられなかった」という。
「それらの街が人気を集める最大の理由は、交通と商業の利便性がいいのに家賃が安いというコストパフォーマンスです。40代以上は街のブランド価値を重視していますが、20代はまったく逆で、ブランドに余計なお金を払うのはバカバカしいと考えているようです。加えて北千住や赤羽には老若男女、さまざまなバックボーンを背負った人が暮らしています。生き方の多様性を認めてくれる街なら、自分も居場所を求めやすい。つっかけサンダルで気楽に外出できるような、等身大で過ごせる街の人気は今後もさらに高まっていくでしょう」
かつての「住みたい街ランキング」が人々の“憧れ”によって固められていたとすれば、今後は“等身大”がキーワードになると語る池本氏。では、具体的にこれから人気の上昇が見込める街はどこなのだろうか?