今年のセールは海外にも広がっている。天猫国際など中国国内のアリババ系海外ECサイトに加え、2016年4月にアリババが経営権を取得したLazadaも参加する。Lazadaは、シンガポールを拠点として、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムなどで展開するASEAN最大のECサイトである。そのほか海外の越境海外ECサイトを通じて、200か国以上の国・地域がセールに参加する見込みである。
今回の規模の大きさには驚かされるが、これまでも規模を拡大しようと思えば、簡単に拡大することができたはずである。しかし、それをしなかったのは、決済システム、配送システムがとても対応できなかったからである。
特に決済システムは重要である。決済システムが負荷に耐え切れず、ダウンしてしまうリスクがある。取引回数が多ければ当然、悪意の攻撃を受ける数も増える。また、セールの規模が大きくなり、世界的に注目を集めれば集めるほど、ハッカーたちのターゲットとなりやすい。
とてもではないが、銀行システムのような集中管理型では処理速度、処理能力が不足する。分散型システムを利用するしかないのだが、安全性を担保するのが難しい。アリババはブロックチェーンに早くから注目しており、研究、実用化を進めているが、その成果が大きく反映されているに違いない。
表の華やかさだけでなく、それを裏から支える強靭なバックオフィスシステムこそがアリババの最大の強みと言えるだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。