毎年、少しずつ年金額は減っている。少子高齢化と長寿化の影響で、どうしても受給額を減らしていかないと、年金制度自体が破綻してしまいそうなのだ。
さて、そこで問題なのは、「一体いくら減らされるのか」ということだろう。ざっくりいうと、これから毎年、約1~2%ずつ減らされていくようだ。「それぐらいなら大丈夫」と安心するなかれ、厚労省はおよそ25年後には「約2割減らさなければならない」とする見通しを公表している。
25年後というと、今40才の人がちょうど65才になって、受給がスタートする頃だ。現在、標準的な夫婦(サラリーマンと専業主婦)のモデル年金額は月額22万1000円だから、そこから2割減ると月額17万6800円になる計算だ(物価不変の場合)。ちなみに、総務省の最新調査によると、無職の60代夫婦の1か月の生活費は、全国平均で26万4000円ほど。つまり、平均生活費を約10万円も下回ることになる。
高齢夫婦2人、そんな金額で暮らしていけるのだろうか?
現在の年金の給付水準でも、生活費が足りなかったり、医療費にお金がかかったりして「老後破産」に陥る人が少なくない。それなのに、さらに引かれて、現役時代の半分ほどの収入で暮らしていかなければならない現実が、遠くない未来に待ち受けている。
ある調査会社が現役世代に実施した「老後の不安」アンケートでは、約半数の人が「公的年金の受給額の減少が不安」と回答した。もはや年金は「老後の安心」どころか、あてにできない「老後最大の不安要素」となっているのだ。「年金博士」として知られるブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さんが解説する。
「年金には、大きく分けて『公的年金』と『私的年金』の2つがあります。公的年金とは、国の制度であり、国に毎月保険料を払って、65才以降に死ぬまで一定額が受け取れる年金です。多くの人がイメージする年金は、この公的年金です。
その一方で、勤め先の会社や国民年金基金、民間の金融機関などに、自分で計画的にお金を積み立てていき、老後に受け取ることを、私的年金といいます。『じぶん年金』と呼ばれることもあります。
公的年金の目減りが深刻なので、多くの人が老後資金に不安をかかえています。だから、自分でせっせと『じぶん年金』を増やそうとする人が増えているんです」