住まい探しにあたって、通勤・通学の利便性は妥協できないポイントだろう。大手不動産ポータルサイト『SUUMO』が実施した「賃貸契約者動向調査」によると、「路線・駅やエリア」「通勤・通学時間」「最寄り駅からの時間」といった項目が部屋探しの決め手として上位にランクイン。ここ数年は特に「駅近」が大きなトレンドになっており、賃貸・売買を問わず駅から徒歩数分圏内の物件の人気が上昇し続けている。
一方で、通勤の利便性にあえて固執しない人も徐々に増えてきているという。『SUUMO』編集長の池本洋一氏は、「会社の近くに住む層」と「住みたい場所に住む層」によって二極化した状況を以下のように解説する。
「職住近接を志向する人は、通勤時間を短縮することが結果的にコストパフォーマンスにつながると考えています。東京の場合、たとえば豊洲に住んでいる人がその代表。近年の城北・城東エリアの人気も、この価値観によってもたらされたものだと言えるでしょう。
同時に『暮らす場所と働く場所は別』という考え方も大きな潮流のひとつです。オフィスは都心にあっても、理想の住環境を求めて鎌倉や葉山に移住する人も多い。働き方改革の一環として、テレワークを導入する企業が増えたことも追い風になっていると思います」(池本氏、以下同)
厚生労働省が推進する働き方改革と平行して、近年、東京都では通勤時間をピークタイムの前後にずらす「時差Biz」を奨励。官民が連携して通勤ラッシュの緩和に取り組んでいるものの、現在のところ大きな効果をあげているとは言いがたい。すし詰めの満員電車に長時間揺られる苦痛を避けるためには、やはり最寄り駅のチョイスが重要になってくる。
東京圏での電車通勤の場合、まず注目したいのは「1本で都心に直結する始発駅」。家の最寄りが始発駅なら、無理なく座席を確保して快適に出勤できる。とはいえ、都心まで片道1時間以上かかる小手指や南栗橋、中央林間といった郊外の駅は通勤にはやや不向きと考える人も多いだろう。現実的な選択肢としては、東京の中心部に比較的近い地下鉄の始発駅が狙い目となる。
「都心まで30分前後の駅、たとえば中目黒、代々木上原、荻窪、三鷹、和光市などは継続的に人気の高いエリアになっています。中でも和光市は副都心線と有楽町線が乗り入れているため、東京方面と渋谷方面のどちらにも1本で行ける点が非常に優秀です」
このように語る池本氏だが、実は他にも注目している始発駅があるという。