ただ、あまり知られていないのが、冒頭の男性のように、気付かないうちに相続税を払い過ぎる事案が多発していることだ。税理士法人アレースの代表で『相続税は過払いが8割』(かんき出版)の著者・保手浜洋介氏が解説する。
「私たちの法人では、相続税を納付済み、あるいは税額の計算が終わっている方向けに、“セカンドオピニオン”の相談を受け付けていますが、そうした相談のうち、実に78%のケースで、相続税の過払いがあったんです。原因のほとんどは、不動産です。相続財産の評価が誤って高く見積もられてしまっている。
相続税は累進課税ですから、相続財産が多いほど税率も上がり、影響はより大きい。相続税を余計に払ってしまっていたり、本来ゼロだったはずなのに相続税が発生してしまうといった事態が数え切れないほど起きています」
税理士は財産評価に不慣れ
改めて相続税の仕組みを確認しておこう。
まずは亡くなった人(被相続人)の財産を集計することから始まる。金融機関に預けている現預金に加え、土地であれば路線価、建物であれば固定資産税評価額に基づき評価する。株や有価証券は時価で計算する。
そういった財産から、借金や葬儀費用を引き、配偶者や子といった遺産を受け取る人(相続人)の人数によって決まる基礎控除を除く。残った額が課税対象だ。
相続税は、財産を残す人が亡くなってから10か月以内に税務署に申告をする。亡くなった人の住民票の除票や、相続人の戸籍謄本など、必要な書類は多岐にわたる。相続財産に土地や建物が含まれていれば、登記簿謄本なども揃えなければならない。
「どのような書類が必要かを説明するだけでも1時間以上かかります。相続税はそれだけ複雑で、ほとんどの場合税理士に依頼しています」(同前)