父親から相続を受けるのが60歳の障害をもった人だったとする。85歳から現在の年齢の60歳を引いて、25年分。年10万円の控除なので、250万円まで相続税が控除される仕組みだ。
「ほかにも固定資産税や住民税の未払い分が計上漏れし、相続税を払い過ぎているケースも多く発生しています。意図的に見逃しをしている税理士はいません。ですが、制度は多岐にわたり、確認漏れが生じてしまうわけです」
保手浜氏はそう力を込める。
税務署は過少申告に厳しい。場合によっては追徴金などを請求されることもある。半面、相続税の払い過ぎを指摘することは滅多にない。自分のお金は自分で守らねばならないのだ。もし過払いの不安があるなら、税務署に「相続税の更正の請求」を行なう。いわゆる還付請求だ。
「相続税の申告は死去から10か月以内に行ない、還付申告は、そこから5年以内なら可能です。直近5年で相続税を納めた人は、払いすぎた税金が返ってくる可能性がある」(同前)
まずは相続の申告書類をチェックし、特に不動産のうち土地が正しく評価されているかを確認したい。だが、素人目に正しいかどうかを判断することは難しい。
「税務署に対し、“申告時の評価額は誤っている。正しい評価額はこちらです”と、計算根拠などを専門的な見地から明示しなければなりませんから、個人で行なうのには限界があるでしょう。最近は成功報酬型で、相談や調査を無料で行なっている税理士法人もありますから、まずは疑問点を整理したうえで専門家に相談することをおすすめします」(同前)
これから相続する人も、すでに納付した人も、確認して損はない。
※週刊ポスト2018年11月9日号