ユキオさんの場合はあくまでも噂だが、本当に“ファミリー企業”だったというのは、ヒロユキさん(40代/出版)だ。
「私が勤めている会社は社員が15人程度の小さな会社で、社員食堂はありませんが、会社の真横にある喫茶店が社員食堂がわりでした。社長が『昼飯を食べに行こう』という時は必ずそこで、出前を頼む社員も多く、多くの社員が週3~4回のペースでその喫茶店を使っていました。
数年前、社長の息子の披露宴に出席した時のことです。ウチの会社は創業家一族が代々社長を務めており、新郎は将来の社長。おとなしく席に座って料理を食べていると、親族席にどこかで見たことがある人が座っており、よく見ると喫茶店のマスターなのです。社員食堂がわりにしていた喫茶店は、社長の親族の店だったのです」
社員はみな、社長一族にせっせとお金を落としていたわけだが、そんなことよりももっと大きな問題があったという。
「その店が“社長の息のかかった店”とは知らなかったので、みな安心して昼ごはんを食べながら社内の悪口をしょっちゅう言っていたんです。サラリーマンのランチなんてそんなものじゃないですか。それが全部社長に筒抜けだったと思うと……」
マスターに、「社長に告げ口してませんよね?」と聞けるはずもなく、その日以来、社員は、その喫茶店から足が遠ざかるようになったそうだ。