「個人年金保険は、長期間にわたって保険料を払い続けることを前提とした商品がほとんどなので、“その間に金利や物価が上昇するリスク”には対応ができないのです。長い支払い期間のうちに、物価上昇率が年1%を超えてしまえば、年金として受け取れる額は実質的に目減りすることになる。しかも、途中で解約すると元本割れした金額しか戻ってこない商品が多いのです」(同前)
超低金利の状況下で、長期にわたる固定金利での運用をすることには、相応のリスクがあるのだ。ただし、「予定利率が高かった時代にすでに加入している人は、低金利の状況においては貴重な金融商品なので、解約しないほうがいい」と荻原氏は付け加えた。
一方の変額型の個人年金は、加入者が預けたお金が投資信託などリスク商品で運用される。
一般的には、物価上昇局面では株や債券などの価格も上昇するので、従来型の個人年金の欠点だったインフレリスクには対応しやすいとされている。ただし、こちらのタイプでも注意が必要となる。
「元本保証ではないので当然、運用がうまくいかなければ年金額が減ることになる。しかも、運用をプラスにするだけではお金は増えません。払い込んだ保険料のなかから、保険会社の経費に加えて、信託報酬という投資信託会社の運用手数料も引かれることになる。そうした手数料が毎年およそ3%かかるので、それ以上の運用実績を残さないと、老後資金はかえって目減りしてしまうことになります」(同前)
定年後に備えて資産を増やすべくコツコツと積み立てたにもかかわらず、払ったお金が減って戻ってくるリスクがある。そのことをきちんと認識する必要があるのだ。
もちろん保険商品なので、掛け金にはついては一定金額まで所得控除が受けられるというメリットもあるが、税制上の優遇でいえば、近年注目を集めているiDeCo(個人型確定拠出年金)のほうが大きい。
「定年後への不安の大きい人ほど、慌てて効果的かどうか疑問の残る“対策”に走りがち」(同前)だというから、「備え」をする上でも、慎重な判断が欠かせない。
※週刊ポスト2018年11月23日号