夫の財産がわからなければ、「後々揉めるのは嫌だから知っておきたい」という名目で預金や株式、生命保険など資産を洗い出すのも手だ。ネットバンキングのIDやパスワードも忘れずにチェックしておきたい。夫だけでなく親の資産も同様に確認しよう。また、ちょっとした気遣いで“争族”を防ぐ対策がある。税理士法人チェスター代表の福留正明さんが話す。
「どの遺産を誰に相続させるかを明記するのは当然ですが、なぜその配分で相続させるのか、といった理由まで書く人は少ない。理由を明記することで法的な拘束力はありませんが、記載されているだけで相続人が納得し、かなりの割合で争いを防げ、遺産協議がスムーズに進みます」
財産の配分に関して主導権を握れるのは、当然ながら、財産を遺す本人だ。
「正月など、家族が集まる機会に、相続についての話をしてもらうよう頼んでおくのがいいでしょう。また、万が一揉めた時のために、本人が遺言書に捺印したりするシーンなどを動画に残しておくことも、無駄な争いを避ける有効な手段です。“認知症の親に無理やり書かせた”などと指摘されることもなくなります」(福留さん)
作成した遺言書は、これまで自宅で保管されることが多く、せっかく作成しても紛失したり、見つからずに捨てられたり、偽造されるなどのケースがあった。今回、遺言書のもう1つの改正ポイントとして、法務局で遺言書を保管できる制度も追加された。1万4000件以上の相談を受けた経験を持つ、相続コーディネーターの曽根恵子さんが解説する。
「今までは公証人役場で作る『公正証書遺言』が確実でしたが、費用が10万円前後かかり、相続人以外の証人が2人必要とあって、決して手軽とはいえなかった。今後開始する法務局での遺言書の保管は数百円で済むとされるほか、相続の際に家庭裁判所に“遺言書が確かにあった”ことを確認してもらう『検認』が不要になるなど、メリットが大きい。ぜひ積極的に利用したい」(曽根さん)
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号