さらに、逮捕劇の“演出”に一役買ったのが朝日新聞だ。11月19日夕刻に逮捕情報をいち早くスクープ。
「企業取材を担う経済部ではなく、社会部の司法担当が抜いてきた。今回は相当な気合いの入りようで、動画班と連動し、ゴーン氏の乗った『N155AN』の飛行機が羽田に降り立つところまで克明に捉えた」(朝日新聞関係者)
翌日以降は、経済部の地力に勝る日経新聞とともに、過少申告の手口や会社の投資資金、経費の流用先などの“スクープ合戦”を繰り広げ、「独裁者ゴーンの驕り」が強調される流れは決定的となった。
「1人に権限を集中しすぎた」──西川社長は会見でそう口にした。権限なき残りの経営陣が「戦い」を挑むには、今回のようなやり方しかなかったのだろう。不正に手を染めた“かつての救世主”と対峙するにあたり、経営陣の胸にも去来するものがあったのではないか。
「(ゴーン容疑者の)功と罪は……単純には比較できないです」
小枝氏は慎重に言葉を選びながら答えた。すべてを詳らかにできない戦いの渦中にある現役幹部の心中を慮っているようでもあった。
※週刊ポスト2018年12月7日号