シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ社が破綻し、その融資を担当していたスルガ銀行による不正が次々と明るみに出た。第三者委員会報告に記された不正とパワハラの内容に注目が集まっているが、スルガ銀行といえば、かつてはその積極的な融資活動の結果、金融庁から「地銀の優等生」と高く評価されていた。経営コンサルタントの大前研一氏が、スルガ銀行問題に関して、同ビジネスの問題点と金融庁の役割と責任について問いかける。
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11月中旬、スルガ銀行は、2018年9月中間決算の最終損益が従来予想の120億円の黒字から986億円の赤字に転落したと発表した。また、9月に引責辞任した創業家出身の岡野光喜前会長ら現旧経営陣9人に対し、多額の損失を招いたとして、総額35億円の損害賠償訴訟を静岡地裁に起こした。
この問題は、一地方銀行の不祥事というに留まらない。今後の金融行政と地銀のあり方を考える上で看過できない教訓が多いと思う。
これまでの報道などによれば、スルガ銀行は女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」などを首都圏中心に展開していた不動産会社スマートデイズの物件を購入する個人投資家らへの融資を一手に引き受け、その際、預金通帳の改竄による投資家の自己資金の水増し、非現実的な家賃収入の設定、虚偽の売買契約書作成など様々な不正を行なっていた。
スマートデイズは投資家に購入させたシェアハウスを一括で借り上げ、入居状況に関わらず家賃を保証する「サブリース」の形態を取っていた。家賃保証を信じた投資家がスルガ銀行で多額の融資を受け、実際の価値よりも大幅に高い価格で物件を購入したが、シェアハウスは入居率が低迷してスマートデイズは物件所有者(投資家)に家賃を支払えなくなり、2018年4月に倒産。その結果、物件所有者の大半は融資の返済が困難になったのである。