スルガ銀行の不正は、シェアハウス融資だけでなく不動産投資向け融資全般に蔓延し、多数の役員や支店長、行員が関与していたとされる。さらに、創業家に対する488億円の不適切な融資も発覚した。
この問題の背景のひとつとして挙げられるのが、会計監査事務所と金融庁の怠慢だ。もちろん、前提としてスルガ銀行内部の監査体制が杜撰で、不正が見えにくくなっていたことが問題だが、「2017年に監査法人による内部監査体制強化のためのコンサルティングを受けて」(調査報告書)いたとされ、内部監査の実効性について疑念を抱かせる部分があったと思われる。ところが、会計監査事務所は適正判断を続け、それを監督する金融庁も問題視しなかった。
それどころか、当時の金融庁の森信親長官は、スルガ銀行を「地銀の優等生」「低金利下でも高収益を叩き出すビジネスモデル」などと絶賛していた。しかし、日銀のマイナス金利政策や人口減少によって、地銀の多くが構造的な収益の悪化に直面して青息吐息だ。
金融庁の「金融行政のこれまでの実践と今後の方針」(2018年9月)によれば、2017年度は全国100超の地銀の過半数の54行が貸付・手数料ビジネスの「本業」で赤字になり、そのうち52行が2年以上連続の赤字で、さらに23行は5年以上連続の赤字に陥っている。
つまり、今や「お金を借りてくれる個人や企業」が少なくなり、伝統的な金融ビジネスが成り立たなくなりつつあるのだ。6年間続いているアベクロバズーカ(安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁による金融政策)の行き着いた先は、まともな銀行の経営が成り立たない、ということだ。