にもかかわらず、今も金融庁は地銀に「将来にわたる健全性の確保(持続可能なビジネスモデルの構築)」を要求している。だが、それが簡単にできるなら、とっくの昔にどこの地銀もやっているはずである。
しかも、中央官庁の事務方トップとしては異例の3年間長官を務めた森氏は、なぜスルガ銀行の不正を見抜けなかったのか、監督官庁トップとして責任はないのか、といったことについて何の説明もないまま今年7月に退任し、米コロンビア大学国際公共政策大学院の非常勤講師・上席研究員に転身してしまった。
この問題は、スルガ銀行の巨額赤字と経営陣批判だけで終わるのはおかしい。同行が不正融資に手を染めざるを得なくなったのは、裏を返せば、もはや金融機関が「従来の常識的な金融ビジネスでは稼げない」という現実の表出と言えるだろう。
金融庁は、あらためて全国の金融機関の融資実態やコンプライアンスを洗い直すとともに、ゼロ金利政策を続けることの意味合いと自らの役割について再考すべきである。
※週刊ポスト2018年12月7日号