なにぶんタダなので、表立った苦情は出ていないものの、あまりに話が長いため、「あと何分で終わるんですか?」とイライラする観光客も少なくないそう。こういった現状を踏まえ、正式なガイドを置こうという動きもあるものの、そう簡単にはいかないそうだ。
「街で観光業を営む若者たちは、口々に『あんなガイドじゃダメだ』と言っていますが、小さな町なので、ガイドが顔見知りだったり、場合によっては親戚だったりするため、そう簡単に排除はできません。
地元の議員や観光協会に軽く意見してみましたが、『もうガイドがいるのに、なんでわざわざ別のガイドを用意するんだ』と、あっさり却下されました。観光協会を牛耳っているのは、我々の街を一大観光地へと成長させた地域の大恩人たちで、我々としては彼ら“第一世代”の意向を無視することはできません。しかしいつまでもこんなことをしていたら……という危機感は若者世代に強く、もっぱらボランティアに頭を痛めているのが現状です」
それもこれもすべては「無償」だから、誰も文句を言えないのが最大の問題点。地元の若者たちの一部は心の中で「せめて週末だけに」「午前中だけに」と願っているものの、お年寄りたちはガイドが完全に生きがいになっており、雨の日も風の日も休むことなく、名所旧跡に立っているそうだ。