義母の介護のために、埼玉まで通っている都内在住の50代主婦Aさんは、2019年1月に迫った相続ルールの40年ぶりの大改正に興味津々だ。
「もうすぐ相続のルールが変わったら、義理のお母さんを介護すると、私も遺産の一部を受け取れるんですね。苦労が報われる気がします。でも、義理の妹には、私が熱心に介護していることは秘密にした方がいいですよね。“遺産目的で介護してるんじゃないの”とか、勘ぐられてもイヤですから…」
今回の改正は、一言でいえば「女性にうれしい改正」だ。夫に先立たれても住み慣れた家に住み続けられる「配偶者居住権」など、女性に有利な制度がいくつか新設された。しかし、仕組みを深く知らないままに飛びつくと、逆にお金を多く払うことになったり、いわゆる“争族”の原因になるなど、思わぬ落とし穴にはまることも多そうだ。
今回の法改正で大きく変わったのは、Aさんのように義理の親を介護していた妻が、「特別寄与料」として遺産相続時に介護の対価を請求できるようになったこと。これまでは、実子ではない「子の配偶者」が介護に尽くしても遺産相続時には蚊帳の外だった。相続コーディネーターの曽根恵子さんが話す。
「介護していた夫の父が亡くなり、長男である夫と次男が遺産を相続する際、妻は介護の『特別寄与料』として、夫と次男にお金を請求できるようになります。現時点で、特別寄与料の詳しい算定方法は決まっていませんが、おそらく『介護にかけた時間×都道府県が定めた最低賃金』で時給換算するなどして、100万~200万円程度は請求できるようになるのではないでしょうか」