しかし、居住権はどんな場合でも選択すれば「得」というわけではない。相続コーディネーターの曽根恵子さんが話す。
「居住権の価値の算定方法は確定していませんが、法務省の簡易評価法によれば、“これから長い期間住む”と想定されるほど価値が上がります。そのため、妻の年齢が若いほど居住権の評価は高くなり、逆に高齢になれば評価は低くなります」
つまり、民法で定められた遺産の相続分は変わらないため、相続時に妻が高齢なら、評価が低い居住権を選んだ方が現金を多く相続できるが、逆に年齢が若ければ、現金を相続できる分が少なくなるわけだ。
「居住権と所有権が等しくなる分岐点は大体65才前後。妻が65才未満なら、居住権ではなく、所有権を選ぶという選択もあるでしょう」(曽根さん)
居住権は譲渡も売却もできない。若くして夫を失った場合、居住権を選んで住む家はあっても、残りの長い人生、少ない現金で暮らさなければならないのは厳しい。居住権に縛られるより、自宅を売却して現金を得て、新生活のための自由と資金を手に入れた方がよさそうだ。
※女性セブン2018年12月13日号