年金は本来、長生きした人ほど得する制度だ。65歳の支給開始時に決定された受給額は、物価変動による多少の調整はあっても、原則として死ぬまで同じ金額を受け取れる。その仕組みが年金制度の「信頼の基礎」になっている。
厚労省が標準モデルにしている夫婦で月額約22万円(夫は厚生年金16万円、妻は国民年金6万円)の年金額で計算すると、夫婦ともに85歳まで生きれば受給総額は5280万円。夫婦がともに100歳まで生きれば総額9240万円、ざっと1億円の年金を受給できることになる。
本当にその「将来の約束」が果たせるのであれば、人生100年時代でも、たとえ人生200年時代が来たとしても恐くない。しかし、国民は“そんなにもらえるはずがない”と勘づいているから、寿命の延びに不安を募らせているのだ。
日本人の平均寿命は男性約81.1歳、女性約87.3歳(2017年)に達したが、実は、日本人の“本当の寿命”はもっと長い。同い年の2人に1人がその寿命まで生きる「50%生存年齢(寿命)」を試算すると、現在55~60歳の男性の「2人に1人」は90歳超、女性の半数は100歳近くまで生きると推定されている。
実際、寿命が延びて全国の長生き世帯の半分に1億円を支給すれば、年金財政はあっという間にパンクする。そこで政府は年金を減らし続ける仕組みを次々につくってきた。