年金カットの「悪魔の仕組み」
「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏がとくに「悪魔の仕組み」と呼ぶのが、2016年12月に成立した、いわゆる“年金カット法”の2つの改悪だ。北村氏が指摘する。
「年金生活者はインフレに弱い。物価が上昇しても年金が増えなければ、生活は苦しくなる。そのため年金制度は物価上昇と同じだけ年金を増やすことになっているが、それを逆手にとって物価上昇率より年金アップ率を低く抑えることで1年に0.9%ずつ年金をカットしていく仕組みにしてしまった。
この手法はインフレ時にしか使えないものだったが、物価が上がらない年の減額分を貯めておいて、インフレ時にまとめてカットできることにしたのです」
今年は物価上昇率が1%に達すると予想されており、来年4月の年金額改定では、持ち越し分を含めて年金が実質1%以上減額される見込みだ。
さらに物価か賃金のどちらかがマイナスになれば、下がったほうに合わせて年金を直接減額する新ルールも2021年から実施される。人口動態的に内需拡大が難しい状況を考えれば、今後は毎年のように年金が減額されていくのだ。
北村氏の試算によると、この年金カット法による減額が続けば、今年から月額16万円の年金受給が始まった65歳の人が90歳になった時には年金額が約13万円、100歳になれば約11万円しかもらえない。
厚労省の資料には、43年後の2061年には「年金額が半額になる」というシミュレーションまで行なわれている。「その頃まで生きているはずがない」と思うかもしれないが、統計的には、現在50代以下の人はそれが現実になる可能性が高いのだ。
※週刊ポスト2018年12月14日号