「糖尿病治療は原則として一生継続するものですが、74歳までと75歳以上では『ヘモグロビンA1c』(血糖値にかわる指標)の目標値が違います。74歳までは基本的に7.0%未満程度にコントロールする必要があるが、75歳以上は8.0未満と緩い。多くの高齢者の患者は、場合によっては治療の中止が可能になる。
とくにSU剤とインスリンは高齢者には低血糖リスクが高く、意識障害や脳細胞にダメージを与えることもある。医師に相談して段階的に服用を減らしていくことができるはずです」
次に「80歳」で見直すのが心筋梗塞など心血管疾患を予防するスタチン系のコレステロール降下剤だ。
「80歳まで10年以上服用して何事もなければ、段階的に減らしていってもよいでしょう。年齢的に一次予防をそれほど心配する必要はないし、服用を中止しても予防効果そのものは10年以上持続するとされているので、コレステロール値に関係なく見直しを検討できるはずです」
その他に、脳血栓症などの予防薬ワルファリンは「85歳以上で2年間血栓症がない」なら服用見直し対象で、降圧剤のARAは「70歳以上の世代は効きにくくなる。75歳を目安に他の降圧剤への変更や服用中止を考えていいでしょう」(石原氏)という。
医療費1割負担の後期高齢者はこれら4種の薬の処方なら薬代と診察料で年間2万円ほどかかる。中止が可能なのに80歳以降も服用を続ければ、90歳までに20万円、100歳になれば40万円も“無駄な薬代”を払うことになるのだ。
薬をやめることができれば、薬代だけでなく、診察費や通院の交通費、時間にも余裕が生まれる。どうすれば“無駄な薬”をやめることができるのだろう。
「医者は自分から高齢者に“薬を減らしましょう”とはまず言いません。そこで、『ずっと調子がいいんですが、薬を減らせませんか』と聞いてみてください。医学的に必要性が薄いと考えていれば、処方を段階的に減らしてくれるはずです」(石原氏)
定期的に通院して必要性の薄い薬を服用し続けることを“健康確認の安心材料”と考えるのは、金銭的にも医学的にも理に適っているとはいえないのである。
※週刊ポスト2018年12月14日号