日本銀行が導入した「マイナス金利」によって銀行に預けるときの金利が下がるデメリットがある一方、銀行から借りるときの金利も下がるメリットもある。金利低下で最も恩恵を受けるのが、生涯で最も高い買い物といわれる住宅ローンだ。
すでにマイナス金利を受けて、住宅ローン金利を引き下げる動きが相次ぎ、変動金利で年0.6%以下、当初10年固定金利で年0.7%台、35年固定でも年1.5%近い歴史的な低水準となっている。
だからといって「今が買い時」では決してないようだ。ファイナンシャルプランナーの八ツ井慶子氏は、「不動産市況を見ると、10年前と比べて物件価格は上がっているのに床面積は減っており、総じて割高といえます」と指摘する。
狭くて高くなっているのなら空前の低金利に踊らされるのは早計だろう。低金利のメリットを生かせるのは、すでにローンを組んでいる人たちがより低い金利へと借り換えることだ。
ただ、借り換えには事務手数料や登記関連費用(印紙税、登録免許税、司法書士への報酬)、保証料といった諸費用が必要となり、借り入れ金額によって異なるが、40万~80万円程度はかかってくる。少しでも低い金利へと飛びつけば、何の効果も得られないケースもある。ならば「分岐点」はどこか。八ツ井氏の見方だ。
「返済期間が残り少ないと諸費用がかさんで借り換えのメリットが生じにくいので、10年以上残っている場合が目安になります。たとえば2年ほど前に30年返済で3000万円のローンを全期間固定金利2.0%で組んだ場合、総返済額はそのままだと約3725万円。1.5%の全期間固定に借り換えられれば、総返済額は約3429万円と233万円も減り、諸費用を引いても200万円近く軽減される計算です」