多くの人にとって、人生でもっとも大きな買い物になるマイホーム。しかし、構造上の不備や雨漏り、給排水管の不具合など、購入後に問題が見つかるケースも少なくない。実際に2018年は、免震・制震ダンパーのデータ改ざん問題が明らかになった。加えて契約内容によっては、売主の責任を追及することができないこともあるという。不動産関連の法律問題に詳しい瀬戸仲男弁護士(アルティ法律事務所代表)は、購入に際して不安がある場合、「契約前に一度弁護士に相談することをおすすめします」と説明する。
「購入する物件の売主が宅地建物取引業者であれば、引渡し後2年間の『瑕疵担保責任』を負うことが民法および宅地建物取引業法で定められています。簡単に言うなら、建物に不具合や欠陥が見つかった場合、業者はそれを補修したり、損害賠償などをしたりする責任がある、というルールです。
しばしば問題になるのは、一般の個人など業者以外が売主で、中古物件を購入したケース。この場合は、『瑕疵担保免責』として責任を負わない契約を結ぶことも可能になります。一度契約してしまえば購入者にとって不利な契約内容でも有効になってしまうため、気になる点があれば弁護士にチェックしてもらうのがいいでしょう」(瀬戸弁護士、以下同)
瀬戸弁護士によると、弁護士事務所に契約条件のチェックを依頼した場合の費用は「数万円前後」。仮に大規模な修繕を自己負担することになれば数百万円の費用が必要になることを考えると、許容すべき範囲の先行投資として検討する価値はある。
さらにポイントになるのは、契約前に提示される「重要事項説明書」だ。宅地建物取引業法第35条によって規定された同書面は、名目上は売主が物件についての重要事項を説明し、買い手が理解を深めたうえで契約するためのものだが、「実際には契約直前にいきなり読み聞かされて、その場でサインさせられてしまうことも多い」のだという。
「たとえばローンを組んだ銀行の会議室に契約日に集まって、売主の業者が重要事項説明書を読み上げたとしても、そのタイミングではもはや検討している時間的余裕はありません。ある種の形骸化ですね。それでも重要事項説明書にサインをしてしまえば、万が一トラブルが起きて裁判に発展したときに買い手が勝てる見込みは少ないでしょう。業者はプロですから、想定される大抵の不都合な事態はあらかじめ重要事項説明書に盛り込んでいますので、その不都合な事態を承知の上で買ったことにされてしまいます」