一戸建てのマイホームで暮らす多くの人にとって、土地の境界をめぐる問題は決して他人事ではない。樹木やフェンス、自動車など隣家の所有物が“越境”してくることもあれば、逆にクレームを付けられてトラブルに発展してしまうケースも十分に考えられる。不動産関連の法律問題に詳しい瀬戸仲男弁護士(アルティ法律事務所代表)は、なによりもまず土地の境界をしっかりと確認することの重要性を指摘する。
「土地ごと家を購入する場合、契約時までに土地の境界確認をするのが一般的ですが、建物に気をとられて確認がおろそかになっているケースも少なくありません。いざというときに右往左往しないためにも、あらかじめ土地の境界をはっきりさせておくのが望ましいでしょう」(瀬戸弁護士、以下同)
土地の面積や状況は測量図に記されているが、測量図にも「現況測量図」と「確定測量図」の2種類があることは押さえておきたいポイントだ。現況測量図はあくまでも土地の所有者が「この点を結んだ線が境界だ」と認識している位置で測量した結果を記したものであるため、信頼性の高いものではなく、隣接地の所有者からクレームが出るおそれがあることに注意したい。
対して、隣接した土地の所有者や道路管理者の立会・確認のうえ、厳密な境界を確定させた結果を記したものが確定測量図となる。道路などの公有地との境界確定(官民査定)は時間も費用もかかるため、一般的な個人間の売買の場合には隣家など民有地のみの境界確定(民民査定)で済ますケースもあるという。
「土地の境界が曖昧な状況を避けるためには、購入前に『確定測量図はありますか?』と不動産業者に質問することが肝心です。中には『なにも知らないだろう』と手を抜いて対応する業者もいますから。あらかじめ確定測量図があれば、トラブルを未然に防ぐこともできますし、売却時や登記を変更する際にも役立ちます。
建物は時間が経てば劣化して価値が減少していくものですが、土地は違います。もし引っ越しで家を売ることになった場合、価値の源泉になるのは土地なのです。商用として転売するときも同様で、境界確認がきちんとできていなければ買い手はつきません」