ただし、中国でも、最近の状況は少し変わりつつある。
中国本土メディアによれば最近、河南省のある専門高等学校において、15歳の学生が6人の同級生と宿舎で酒を飲み、昏睡状態となった。翌日、様態がおかしいので病院に運んだところ脊髄炎と判断され、体に大きな障害が残ることになった。治療費は40万元(640万円、1元=16円で計算、以下同様)以上かかったそうだ。これに対して学生側が学校側などを訴え、裁判所は学校側に80万元(1280万円)強、未成年に酒を販売したスーパーに6万7000元(約107万円)、6名の同級生に全体で20万元(320万円)強の支払いを命じている。
これまでは飲酒に比較的寛大であった世論も、こうした痛ましい事件が多発していることから、飲酒に批判的になりつつあり、学内での飲酒を厳禁する教育機関が増えている。社会においては、ここ4~5年、汚職撲滅運動が厳しくなっており、宴席が激減している。
さらに、大都市を中心に、飲酒を通じての人間関係形成を古臭いと感じる若者が増えている。社会生活において、飲酒の必要性が急速に薄れているようだ。中国はあらゆる面で変化が速い。
白酒の消費量は2016年がピークとなっており、2017年は減少に転じている。ビールについては2013年が消費量のピークとなっている。酒造メーカーにとっては今後、厳しい淘汰の時代になるかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。