年金大改悪を前にして老後の「お金」の悩みを抱えている人は少なくない。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が講師を務める老後資産セミナーでは、さまざまな質問が飛び交う。その中も目立つのが、病気、入院、通院などでかかる医療費についての質問だという。
健康リスクが増加する定年後に、最も心配なのが医療費。頼みの綱となるのが「高額療養費制度」だ。
「医療費が一定額を超えた場合、上限との差額が健康保険から払い戻される制度です。年金生活者に多い住民税非課税世帯の場合、自己負担の限度額は2万4600円で済みます」(北村氏)
ただし、高額療養費制度がカバーするのは保険診療のみで、入院時の差額ベッド代や日用品代、通院の交通費などは自己負担となる。
生命保険文化センターの調べでは、60歳代で入院した患者の自己負担額は平均21万7000円だった。さらに、今後は医療費負担の増大が確実視される。現在、後期高齢者の医療費窓口負担は原則1割で済むが、政府は団塊世代が75歳になる前に、原則3割に引き上げる議論を進めている。そうなると、入院費用の負担もハネ上がるだろう。