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親の死後、実家を「継ぐか、売るか」の損益分岐点は

 上物を解体しても問題は解決しない。更地になれば、今度は固定資産税が6倍に跳ね上がってしまうからだ。

「たとえ高値がつかなくても、損益を考えれば空き家は一刻も早く売るべきです。親世代にとっても、子供たちにとって負の相続となる可能性が高いことを考えれば、生きているうちに売却を考えたほうがいい。数百万円で売却できれば、賃貸マンションに引っ越して暮らすための十分な原資になる」(同前)

実家に担保価値はあるか

 子が受け継いで「そこに住む」というケースであっても、いくつかの“条件”をクリアしなければならない。

 まずは、実家に移り住んだ後に、その家を無理なく維持できるかどうかだ。築年数が古い物件であるほど修繕箇所は多くなり、水回り、床下、外壁の修繕など一度に数十万円から百万円単位の修繕費が必要となる工事もある。将来的には、バリアフリーなど大規模な改修も視野に入れる必要がある。老朽化した実家の相続は、この先に生じる金銭的な負担を十分に考慮しなければならない。

 兄弟がいる場合は、遺産分割の問題も発生する。もし自分が長男で、弟(次男)がいる場合、実家を相続するなら、弟の法定相続分を「お金で渡す」必要が生じる。親の遺産に金融資産が十分含まれていればよいが、そうでなければ実家を手離さずにまとまったお金を工面するかを考えなければならない。

 判断のカギになるのが、実家の不動産に「担保価値があるか否か」だ。不動産に相応の担保価値があれば金融機関からお金を借り入れ、弟に法定相続分を現金で渡すことも可能になる。

 ただしその場合、長男は金利を含めた月々の返済を背負う。老後の収入が年金だけになることを考えれば、返済に窮し生活レベルを下げなければならない可能性もある。また、もし金融機関からの借り入れ額が不十分だった場合、弟は相続財産の受け取りを延々と待たされることになる。兄弟ともにリスクを抱えてしまう。前出・橘氏が言う。

「あくまでも次男の了解が前提となりますが、法定相続分を分割で支払うという方法もあります。長男が次男に支払う合計金額と支払い方法を遺産分割協議書に明記することで、相続の公平性が担保されます」

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