親が亡くなったとき、意外に多いトラブルが老人ホームから返還される“入居一時金”をめぐっての“遺産争い”だ。
有料老人ホームに入る際に払う「入居一時金」は預かり金扱いで、入居時点で金額の2~3割が償却され、入居期間に応じて減額されていく仕組みが一般的だ。1000万円単位の一時金を支払い、入居してほどなく亡くなれば多額の残額が遺族に返金される。そのため、入居時の契約書で、未償却の入居一時金を誰に残すかの受取人を指定しておくケースが多い。
南青山M’s法律会計事務所代表の眞鍋淳也弁護士によれば、戻ってくる入居一時金について「相続人同士のトラブルが多い」という。
「たとえば、長男と同居していた高齢の母親が老人ホームに入居し、老人ホームとの契約書の入居一時金の受取人欄に長男の名前を書いたケース。母親の死後、老人ホーム側は入居一時金を長男に返却しますが、そのお金は母親の相続財産で、長男以外の兄弟も相続人となります。長男がそのお金を使い込んでしまったりしたら、“兄弟みんなのお金なのに!”と他の相続人との間でトラブルになるわけです。
他にも、受取人欄に名前が書かれていた人が相続人ではないことが後から発覚して問題になることもあります」