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大前研一氏、東京五輪後に残るのは不要なインフラと巨大施設だけ

 しかし、どれだけ莫大なコストをかけたところで、しょせん東京五輪は広告代理店やゼネコンなどが儲けるだけの「禿山の一夜」(*注)に終わるだろう。

【*注:モデスト・ムソルグスキー作曲の管弦楽曲。「聖ヨハネ祭前夜、禿山に地霊チェルノボグが現れ手下の魔物や幽霊、精霊達と大騒ぎするが、夜明けとともに消え去っていく」というロシアの民話を元に作られた】

 たとえば、メインスタジアムとなる新国立競技場は、五輪が真夏に開催されるのに、予算をケチったせいで屋根も冷房もないという理解不能な代物だ。あるいは、江東区青海の東京港中央防波堤内側および外側埋立地間の水路に新しく整備されるボート・カヌーの「海の森水上競技場」などは、大会後も有効利用されるとは思えない。

 一方、2028年のロサンゼルス五輪は、公費を1セントも使わない計画だ。閉会式が終わったら不要になるような新しい競技施設は造らず、1932年と1984年の五輪でもメイン会場になったロサンゼルス・メモリアル・コロシアムをはじめ、プロスポーツチームのスタジアムや大学の体育施設など既存のインフラを活用する予定なのだ。

 選手や観客の移動手段には、すでにプロジェクトが進行している大量輸送システムを利用するという(ライトレールなど公共交通網の整備・拡張を五輪を利用して実現しようとしている)。また、必要最低限の新しい施設については、民間からアイデアを募集し、最も優れたものを採用して任せる。つまり、その経費を民間資金だけで賄うわけだ。

 こうした工夫によって、計画通りにいけば4億~5億ドルの黒字で大会を終えることができるとみられている。実際、ロサンゼルスは過去2回の五輪でも黒字を出した実績がある。

 東京五輪の場合は、国、大会組織委員会、東京都がそれぞれいくら負担してどうのこうのとやっているが、公費(税金)を使う時点で最初から歪んでいるのだ。したがって、東京五輪は短い宴が終わったら、残るのは不要な巨大施設や利用者の少ない交通インフラと、国民にツケが回る大赤字だけだろう。

※SAPIO2019年1・2月号

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