あの手この手で減らされた年金をどうすれば取り戻せるか――。国民は知恵をしぼらなくてはならないわけだが、政府はその“原資”を都合のいい「打ち出の小槌」にした挙げ句、その失敗のツケを国民に回そうとしている構図がある。
2018年末、日経平均株価は1年3か月ぶりに2万円を割り込んだが、この急落により年金資産に甚大な影響が生じている可能性が高い。ファンドマネージャーとして20年以上の実務経験を持つ資産運用評論家で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用に詳しい近藤駿介氏が指摘する。
「公的年金を運用するGPIFの2018年10~12月期の収益が、評価損、実損を合わせて14兆円を超える損失となる可能性が高い(2月1日に公表予定)。9月末時点で年金資産(約165兆円)の半分強を占めていた国内株式と海外株式の市況が大幅に悪化した。収益率はどちらもマイナス10%を大きく下回ることから、導き出された損失額です。この損失は将来の年金受給額に影響を及ぼす」
すでに複数のメディアが同様の数字の見通しを報じている。GPIFはかつては資産の7割近くを安定的とされる国内債券で運用してきた。安倍政権は、アベノミクスの「3本の矢」である成長戦略の一環として、そのポートフォリオを大きく変更した。
2014年度に国内外の株式の運用比率を24%から50%に引き上げたのだ。GPIFは国内株式を10兆円規模で買い増すことになり、株価を押し上げる影響力の大きさから「クジラ」と称された。