「運用で損したら年金を減らす」
一方で、年金資産が株式市場の変動の影響を受けやすい資産構成となり、その結果、株価が急落した2015年7~9月期には7.9兆円の損失を記録している。今回の損失額はその2倍近くに上るとみられているのだ。
かつてGPIFの運用失敗を国会で追及された安倍晋三・首相は「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」(2016年2月15日、衆院予算委)と発言しており、運用次第で将来的に年金カットがあり得ると認識しながら、高いリスクを取っているのだ。
GPIFが預かるのは国民の年金保険料である。それを使って大量の株を買い、うまくいっている時は「アベノミクスで株価が上がった」という宣伝材料にし、うまくいかなくなると、国民が受給減を押し付けられる。これから、さらなる問題が待ち受けている。
「2035年からはGPIFの『資産取り崩し』が始まる予定です。年金支給のために、GPIFが継続的に株を売っていく状況になる。それによって株価が下がり、GPIFの持っている資産も目減りするという悪循環に陥るリスクがあるのです。もちろん、受給減に直結する問題です」(前出・近藤氏)
第一次安倍政権時代に噴出した「消えた年金」問題は根本的解決には至っていない。そうしたなかで、さらなる「消える年金」が生まれようとしている。
安倍首相は2014年10月30日の予算委員会で、「安倍政権ができてから約1年9か月の(年金資産)運用収益は約プラス25.2兆円でありまして、これは大きく改善しているわけであります。(中略)年金財政の安定化に大いに私は貢献をしていると思います」と胸を張って答弁していたが、「3か月で14兆円の損失」が公になった時、なんとコメントするつもりなのだろう。
※週刊ポスト2019年2月1日号