もしも王貞治選手が荒川博コーチと会わなかったら、もしもイチロー選手が河村健一郎コーチと会わなかったら……。さすがに一般社会でここまでのレベルの“if”というものは滅多にないが、「恩人」との出会いが人生を大きく好転させるケースは確かにある。そうした出会いの大切さについて、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が考察する。
* * *
時々ゾッとすることがあります。それは「もしも○○さんと会っていなかったら……」ということです。そもそも人生というものはどんな親から生まれるか、ということがまずは大事なのですが、一旦この世に生を受けてコミュニケーションを取れるようになってからは、友達、親戚、先生、先輩、後輩といった縁のある人の中から「恩人」とも言える人の存在が自身の人生を切り拓いてくれるようになります。
高校までの友人にも感謝することは多いですが、「社会」と接するようになると、大学以降の友人にも感謝が必要です。私の場合は、大学同期の常見陽平君(千葉商科大学専任講師)、治部れんげさん(ジャーナリスト)、そして現在一緒に会社を経営しているY嬢の3人に絶大なる感謝をしたい。
こうしたベースがあったうえで、様々な人との出会いがあり、現在45歳の自分の生活を形作っているのですが、ここでは小学館のK氏について述べさせていただきます。同氏はちょうど1年前、2018年1月上旬に心筋梗塞で倒れ、1月28日に亡くなりました。今年、ご命日の当日にお墓参りをするとご家族に余計な気遣いをさせるのでは、ということで、K氏が指揮を執っていたプロジェクトに関わってきた人たちを中心に、役員、社員及び契約社員、フリーランスの総勢約20名で27日に墓参りに行ってきました。
一人ずつ墓前でお祈りをしたのですが、私は以下のようにK氏に感謝の念を伝えました。とにかく偽らざる気持ちのすべてです。
「Kさん、安らかにお眠りください。本当にあなたに会えて自分の人生は一段階上がりました。Kさんに会うまでの私は、仕事はきちんとあるフリーの編集者でしたが、何か『もう一つの実績』が必要でした。Kさんが主導して作ってくれた『NEWSポストセブン』というサイトにかかわらせてもらうことにより、私自身は色々と発見をし、よりネットニュースというジャンルで新たな世界を見せてもらえたと思います。
また、小学館で仕事をさせてもらったことにより、それこそ新潮社をはじめとした出版社、そして新聞社やテレビ局等からも注目してもらい、今、Kさんのお蔭で仕事をたくさんもらえています。Kさんの同僚や部下の方とも今日こうして一緒に墓前に来られたわけで、良くしていただいております。すべてKさんのお蔭です。本当にありがとうございました。Kさんはオレの恩人です」