するとどうなるか。世帯数が減る一方で、現在のような年70~80万戸ペースで住宅総数が増加していくと、空き家が増えるのは必至でしょう。5年ごとに行なわれる国土交通省の統計では、2013年の空き家率は13.5%でしたが、これが2018年(まだ発表されていない)には16%を超えてくるに違いありません。野村総合研究所の予測では、2033年までに空き家率は倍増して30%にも達すると見られています。
そんな道筋が見えているにもかかわらず、政府は消費増税対策として住宅ローン控除の拡充という「新築優遇策」を進めようとしています。住宅ローン控除の拡充で新築物件が増える一方で“家余り”が進むというのは、あまりにも場当たり的ではないでしょうか。
このままいけばどうなるか。「いま住宅ローンを組めばトクする」などと信じ込んでせっかくマイホームを手に入れたのに、一方では家が余って不動産価格が下落する傾向に歯止めがかからなくなる恐れがあるのです。都心ならまだしも、地方都市や郊外でその傾向は顕著になるのではないでしょうか。住宅ローンを抱えて、何かの事情で家を手放さなくなったとしたら、不動産価格が値下がりしていることで家を売ってもローンが残ったりして、にっちもさっちも行かなくなる可能性があるわけです。
もちろん政府は景気を冷やさないことに力を入れてほしいのですが、それによって「空き家率の急上昇」という今後の歪みを大きくしようとしている。目先ばかりにとらわれず、もっと中長期的に有効な手立てを実践しなければ、そのツケは国民に回ってくるのです。