遺言書は生前にできる、相続トラブルを防ぐ最も有効な対策。だが、親の気が変わって遺言書を書き直すこともよくあるため、相続時に遺言書が複数見つかるケースはザラにある。 東京都在住の61才主婦・村山さんが話す。
「母は4年前に他界、父も認知症を患い、1年前に亡くなりました。私は2人姉妹の姉で、妹は実家の千葉県で父の面倒を見ていました。2年前、父の物忘れがひどくなり始めた頃、これ以上症状が進行してはよくないため、妹も同席して父に公正証書遺言書を作成してもらいました。父はそれからすぐ認知症を発症し、間もなくして死亡。その後、相続手続きのため公証役場に遺言書を受け取りに行くと、もう1通、公正証書遺言書が出てきたんです」
村山さんの妹は、3人で遺言書を作成した後、こっそりもう1通父親に作成させたようだった。3人で作った遺言書には、事前に話し合った通り「遺産を姉妹で均等に分ける」としていたが、妹の遺言書には「父の面倒を見ていた妹が遺産の4分の3を相続する」とあった。
「父の真の意思なら受け入れますが、妹が父の認知症を悪用したことは明白でした。無効を主張しましたが、結局、妹の遺言書が適用されてしまった。それから妹とは顔を合わせる気持ちになれません」(村山さん)