配偶者が亡くなった時の手続きや相続をつぶさに見ると、「妻を失った夫」より「夫を失った妻」の方が、今後の生活や人生について考えることが多い。中には、女性に特に関係のある手続きもある。「復氏届」と「姻族関係終了届」だ。
復氏届は、名字を旧姓に戻す手続きだ。たとえば若くして夫(名字A)に先立たれた妻が数年後、ある男性(名字B)と再婚を考えたとしよう。妻は再婚前に復氏届を出して旧姓「C」に戻すケースが多いという。ファイナンシャルプランナーの横川由理さんが話す。
「復氏届は、結婚前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作ることで、旧姓に戻れる制度です。ただし、戻れる姓は“1つ前”まで。妻が元夫の名字Aのまま、Bさんと再婚したとすると、妻の名字はBになる。その後再び離婚すると、妻は名字Bを名乗るか、復氏届を出してAを名乗るかしか選択肢はなく、“2つ前”の旧姓Cには戻れないのです。2つ前の旧姓に戻したいなら、家庭裁判所に許可を申請すれば、多くの場合、変更可能ですが手間がかかります」
婚姻関係を終了させる「姻族関係終了届」は、夫の死後、夫側の血族と縁を切りたい時、この届け出1枚で関係を解消できる。
「夫の死後も、夫の血族と姻族関係が続いていれば、たとえば義親の『扶養義務』が発生することがあり得ます。義親の介護を避けるなどの理由のほか、夫の親族と考え方が合わないなどの理由で、姻族関係終了届を出す人が多い」(横川さん・以下同)