そんな「空白恐怖症」とは対照的な人もいる。クリエイティブ系職種の会社員・Bさん(30代男性)は、「むしろ、空白を作らないと辛い」というのだ。
「学生時代から一人でいることが好きだったので、誰かとの予定がないというのは普通です。カリキュラムを決める時、何日間かに講義を詰め込んで無理に休日を作り、その休日にがっつり予定を入れるという人もいましたが、僕は、講義は基本的に好きなものを選択し、1日のうちにほどよく空きをつくって、何も予定がない時間を楽しんでいました。予定がないからこそ、プラプラ街を歩いてみたり、図書館やカフェで読書をしたり、気ままな時間が何より好きでした」(Bさん)
仕事をするようになっても、そのスタンスは変わらないBさんは、学生時代より予定が詰まりがちな日々に、息苦しさを覚えることも少なくないという。
「平日の仕事は仕方ありませんが、土日は1日1件限りが理想。今日は何しようかなって朝に考えるくらいがちょうどいい」(Bさん)
こうした予定を空けたくない人、空けたい人の心理とは何なのか。大月短期大学経済科兼任講師で社会心理学を専門とする川島真奈美さんはこう分析する。
「空白が怖いというのは、劣等感の裏返し。自分は毎日充実している、自分はこれだけ頑張っていると思い込むことで、安心したいんです。SNSで“リア充”を発信することで、意識的にせよ、無意識的にせよ、優越感に浸りたい行動と似ています」
周りからどう見られるかということを気にする、まじめで神経質な人に多いという。
「本当はそれほど活動的ではなく、自分の世界を持っていて1人でいることが好きなのに、そんな自分がコンプレックス。他人から“ダメ”だと思われるのが嫌だから、行動的になろうとする。本当は1人の方がいいのに無理して無駄な予定を作っては後悔してしまう」(川島さん)
「空白恐怖症」の人は、何らか“心の空白”を抱えているケースも多いという。川島さんは「さびしさを埋めるために、本来大切にすべきことを見失い、かえって人と疎遠になったという皮肉も。予定は吟味した方がいいでしょう」と警鐘を鳴らす。
スケジュールの空白を気にしすぎるのも、ほどほどにしたほうが良さそうだ。